自家栽培の古代小麦を使った新しい和菓子が誕生しました。
どら焼きや恩送りのお干菓子に続き、以前よりご好評いただいていた「このみ」も、ついに自家栽培の古代小麦を使った焼菓子へと生まれ変わりました。
古代小麦は、グルテンの含有量が少なく、全粒粉にすることで栄養価も高いとされています。しかし、通常の配合では納得のいく品質に届かず、ゼロからレシピを見直し、焼き加減や風味まで丁寧に再構築しました。
どら焼きに関しても、あえて“キジトラ模様”が浮かび上がるような焼き方にすることで、生地がふっくら仕上がる工夫を凝らしています。
これらの繊細な調整は、和菓子職人として30年の経験から生まれた技と知恵の結晶です。
さらにこの1年で、トラクター・コンバイン・籾摺り機・保存用冷蔵庫・製粉機を揃え、全工程を外部委託に頼らず、安心・安全な原材料を自らの手で届ける体制を整えました。
6次産業化を見据え、経営方針も大きく転換。
大胆な改革を重ねながら、和菓子「このわ」というブランドを安定させることができたのです。
正直、飛べないボロボロの機体で、落ちるかもしれない不安と戦いながらスレスレの崖っぷちを飛ぶような日々でした。
そして、それはとても孤独な時間でもありました。
けれど、いずれ物価は高騰し、品不足が起こることは予想していました。
だからこそ、やり遂げるしかなかったのです。
今、私たち「このわ」は販売価格を据え置きながら、場合によっては値段を下げる努力もしています。
それは大勢の方に数を売るためではなく、
「このわ」と真摯に向き合い、信頼し合えるお客様との出会いを大切にしたいからです。
私たちが目指しているのは、
たくさんの人に売ることでも、すべてのご要望に応えることでもありません。
“このわ”という場に共感し、きちんと向き合ってくださるお客様と、
お互いに信頼し合える関係の中で和菓子を届けていくこと。
それが、私たちの大切にしている商いのかたちです。
そのため、
すべてのお声にお応えできるわけではありませんし、
ご期待に添えない場面もあるかもしれません。
私たちは、必要としてくださる方に、必要な分だけ。
心と心が通うやりとりの中で、そっと和菓子をお届けしていきたいと願っています。