多くの人は、橋をかけるとき行政に依頼し、国の財源を使います。
しかし私は開業当初から、少し違う橋のかけ方を伝えてきました。
それは──
まず魚釣りを始める。
そこに人が集まり、みんなで魚釣りを楽しむ。
沖にもっと大きな魚がいると気づき、力を合わせて桟橋をかける。
楽しいからこそ、少しずつ伸ばしていく。
やがて、向こう岸からも桟橋をかけている人に出会い、橋は2倍の速さで完成する。
小さな力が集まり、やがて形になる。
その過程に必要なものは、お金や財源ではなく、遊び心と支え合いです。
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和菓子このわの運営も同じです。
お客様が「このわ」で和菓子を買ってくださる。
そのお金はまず、農地を貸してくださる地主さんへ感謝を込めて返す。
次に、共に頑張る信頼できる農家さんを応援する資金へつなげる。
農業機械を支えてくれるメーカーの技術者へも敬意を払い、循環を守る。
そして、しっかり税金を納め、社会へ循環を返す。
残った分は農業やエネルギーへ投じられ、やがて質の高い和菓子となってお客様のもとへ還っていく。
つまり──
「お客様のお金がどこに使われたのか」が明確に見える仕組みです。
ここにこそ、安心と共感が生まれるのだと思います。
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実際に、今年の芋ようかんは昨年より40円安い110円(税込)で販売できました。
創業当初の15年前、デフレ経済でも実現できなかった成果です。
お客様の一口が糧となり、共感が生まれ、やがて大きな実を結んで還ってくる。
小さな魚釣りから始まった挑戦が、やがて大きな橋をかける。
それが、このわの商いのかたちです。
国がかける立派な橋は、私にはできないかもしれません。
しかし、人と人をつなぎ、エッセンシャルワーカーが安心できる“港”へ導く心の橋をかけること。
それこそが、和菓子このわの役目です。