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今、本物は静かに欲を消している。
ハザ掛けをしていると、
パチパチと稲が乾く音や、
風と共に稲の香りがして、
本当の豊かさを感じます。
コンバインで一気に刈り取っていては、
絶対にわからない地球の息吹。
手のひらで感じられるこの瞬間が、
たまらなく幸せです。
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大量生産・大量消費に
終止符が打たれつつある今。
あえて手間を惜しまず、
太陽と風の力で天日干しするのは、
昔に戻るためではなく、
本当の豊かさを取り戻すため。
これからは、
「たくさん作ること」より「何を込めるか」
が問われる時代です。
こだわりとは、
量を減らすことではなく、
心を込める余白を取り戻すこと。
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大量生産されたものも、
いずれ需要が消え、
経済そのものが回らなくなる。
それを知っているのは、
ずっと“ものづくり”を支えてきた現場の人たち。
彼らは声を上げることなく、
静かに、欲を消していく。
それは諦めではなく、
次の時代への準備。
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最近、私の周りの仲間も、
昔のようにお金を使わず、
静かに“欲”を消しています。
「俺、もう欲がなくなった」
そんな言葉をよく聞くようになりました。
きっと、みんな何となく感じているのでしょう。
この先の世界が、
“持つこと”よりも“生きること”を
問われる時代になることを。
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もっと大量に、
もっと多くの人に、
もっと地位や名誉を、
もっと技術を磨いて――
その「もっと」の先に、
いったい何があるのだろうか。
手を止めて空を見上げたとき、
風や音や香りの中に、
“もうこれで充分だ”と思える瞬間がある。
そういえば、
生産が追いつかなかったあの頃、
みんな笑っていた気がします。
もしかしたら、
幸せだったのは「足りなかったから」なのかもしれない。
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そして今、
静かに欲を消している人たちの中から、
本当の創造が始まろうとしています。