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周期の断絶

周期の断絶 ― 和菓子屋の視点から見える真実 ―

和菓子屋は、行事やお祝いのときだけ忙しい。
春の桜餅、秋のお彼岸、年末の花びら餅。
その一瞬一瞬に全力を注ぎ、
その後は静けさの中で次の季節を待つ。

だからこそ、
「もっと平均的に買っていただけたら」
という願いが、ずっと心の奥にあった。

そうすれば、
みんなに“必要な分を、必要なだけ”
お届けできるのに。

しかし、コロナがその循環を止めた。

経済を止め、
そして「再開」という名の下に、
無理やり再び回した。

その瞬間、
和菓子屋の販売周期と同じ“歪み”が、
世界中の経済に生まれた。

農家は、都合よく止めることができない。
自然は、ボタン一つで休まない。
そして、都合よく供給なんてできない。

にもかかわらず、
人間は“経済だけを止めて、また動かす”という、
自然への冒涜をしてしまった。

その結果、
欲しい時に米がなく、
余った時には売れない。

この不均衡を繰り返すうちに、
生産者は“作る意味”を失っていく。

そして、
米を作る人がいなくなった時――
失業者も、富裕層も、
誰もが同じように食べられなくなる。

つまり、
「止めたもの」は経済ではなく、
命の循環そのものだった。

和菓子屋は、自然の周期とともに働く。
お米、豆、砂糖――
すべてが時間と季節の中で命を持っている。

その“リズム”こそが社会全体に必要なのに、
人間はそれを、
数字とスケジュールで管理しようとした。

数字はリズムを持たない。
だから、どれだけ効率化しても、
心は豊かにならない。

命を支えているのは「速さ」ではなく、
音と音のあいだにある“間(ま)”の心。

和菓子このわの仕事は、
それを忘れかけた社会に、
もう一度“季節のリズム”を思い出させること。

この先も、
このわは材料をできるだけ自給し、今までお店を支えてくださったお客様にだけ、安心して和菓子をお買い求めいただけるように、
全力で六次産業化を推進してまいります。

無常の時代に、変わらず手を動かす者として。

経済を回すのではなく、
命をめぐらせるために。

和菓子このわ 店主 中澤 力

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