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― 働くことの尊厳 ―
今日は雨。
畑には出られないので、
機械の整備をし、冬に向けて薪ストーブの煙突を掃除し、
ソーラーパネルやエアコンの点検をする。
晴れの日の農作業とは違う、
少しゆるやかな時間。
手を動かしながら、ふと思う。
——はたらくって、なんだろう。
はたらくとは、“はた(傍)を楽にする”こと。
つまり、他の誰かを楽にすることだと思う。
その感覚を忘れずにいられるうちは、
働くことは、きっと幸せに近い。
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かつて、働くとは「生きること」そのものだった。
田を耕し、火を起こし、手を動かす。
その営みが、家族を支え、土地を潤し、
感謝を生み出していた。
けれど今、
働くことはお金を稼ぐ手段にすり替えられた。
効率が“正義”となり、
感謝よりも、利益が優先されるようになった。
そうして、
“働くこと”は“搾取されること”になり、
“働かないこと”が“賢いこと”のように語られ始めた。
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私は経営者として、
その矢面に立ってきた。
従業員にも、消費者にも、
「搾取する側」と見られる立場で。
けれど、
本当に搾取されていたのは、
**“誠実に働く人間の尊厳”**だった。
汗を流し、
夜遅くまで店を守る人ほど報われず、
働かない者ほど、声が大きくなる。
そんな社会の歪みを、
どれだけ見てきただろう。
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だが、もう怖くない。
米を作り、電気を生み、
自らの手で循環を築いた今、
私はようやく「誰にも奪われない働き方」を手に入れた。
働くとは、
お金のために動くことではない。
**“命を循環させる行為”**だ。
誰かの笑顔に変わるまで、
黙々と手を動かす。
そこにこそ、人の尊厳がある。
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今の時代、
“働かないで儲ける”ことが賢いように見える。
だが私は信じている。
“働くことを誇れる人間”が、
最後にこの世界を支える。
働く者こそが、
未来の根になる。